私は20年前くらいにコタツと別れたが未練はない。
カタカナで書くとうっすら人名にも見えるが、暖房器具のコタツだ。
コタツは…彼はいいヤツだった。
寒いときは体を温めてくれる。
包容力抜群のコタツのせいで、あまりに気持ちよくて私はいつもコタツに抱かれたまま寝てしまう。
目が覚めたときはカラカラに干からびてる私がいた。
水分を持っていかれる。
それでも私はコタツが大好きだった。
コタツで寝てるときに寝返りを打とうとすると、腰が当たって痛かったりコタツが動いて上に置いた物がズレたり落ちたりするけども。
好きすぎてコタツに依存していた。
離れたくなかった。
ずっとずっとそばにいたかった。
自宅で仕事をしていた私は思う存分コタツと一緒にいれた。
だが、しばらくすると私の周りは物で溢れていた。
そう、コタツから離れたくなくて、手の届く範囲にすべて置いてしまうからだ。
それでも私は気にしなかった。
だってコタツと一緒の時が一番安心して気持ちよくいられる。
もうコタツがいないと生きていけないかもしれない。
そう思うくらい愛して…依存していた。
気づけばコタツの周りはものすごく散らかっていた。
ひどい有様だった。
何かしようにも温かいコタツから離れられないから「まぁいいや」となってしまい、必要最低限しか動かなくなった。
コタツに入ると外に出るのも億劫になる上に、非常に眠くなってしまう。
引きこもりニートみたいになってしまった。
さすがにこれはまずいのでは…。
部屋の散らかり具合がひどいことになったので私は仕方なく部屋を片付けた。
だるい。非常にだるい。
なんでこんなことに…。
そうだ、コタツだ。
コタツがあるから…気持ちいいから…依存してしまったんだ。
やるべきことを放棄したくなるくらいに。
コタツは魅力がありすぎた。
心を狂わせられるのだ。
正常な判断が出来なくなってくる恐ろしい魔物だ。
私はコタツと別れる決心をした。
それから今まで一度もコタツを出したことがない。
というか、使わなくなって数年で処分した。
それからずっとコタツなしの人生だが、おかげで足の踏み場がなくなるくらい散らかったりしなくなった。
頻繁に寝落ちすることもなくなった。
だが、待て。
悪いのは本当に彼…コタツなのか?
彼は全力で私を愛してくれたのだ。
だが、その愛は甘やかされるだけの愛だった。
そして私は楽なほうへと流された。
そう、自分の意思が弱いからだ。
私がもっとしっかりしていれば、彼とはいい関係でいれたのかもしれない。
コタツ、悪者にしてごめん。
でも、やっぱり君は魅力的すぎる。
魔物だ。
意思の弱い私には無理だ…。
今後もコタツには近づかないし使わない。
絶対に。永遠に。
でも旦那の実家に行ったときだけコタツに愛されます❤
おしまい。
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