餌付けされやすい嫁


日常

私は食い意地が張っていると自分で思う。
昔はこんなんじゃなかった。

子供の頃は親が外食に連れて行ってくれるとワクワクはしたけど、いざメニューを開くとお値段が気になってしまってた。
弟は1300円以上のゴージャスなセットを頼む。
私は親の財布を気にして、弟が高いもの頼むなら私は安いものにしようと一番安い890円のメニューを指さした。

父親が「本当にそれでいいのか?好きなの頼んでいいんだぞ」と言う。
私が遠慮してることに少し気づいたのかもしれない。
でも私は「これが食べたいから」と言ってそこはゆずらなかった。

外食では毎度そんな感じだった。

そして大人になり、自分で稼ぐようになってからも外食は滅多にしなかった。
家族で外食に出かけることも少なくなっていたし。

その後は同人誌即売会のスタッフだった8歳年上の男性と知り合い、その方がなぜか私をえらく気に入ったようで食事に何度も誘ってきた。
「私はお金ないんで」と断ると「奢るよ」とのこと。

「ご飯だけなら行きます!」

奢ってくれるならと、毎週誘われては一緒にご飯を食べた。
付き合ってるつもりはない。
一緒にごはんを食べて雑談して、ごちそうさまでしたって別れてた。

その方いわく「ももさんはいいね、すごく美味しそうに食べるし、食べっぷりもいいから見てて嬉しくなる。奢り甲斐がある」とのこと。
続けてこう言った。
「他の女の子はみんなもじもじしてちょっとしか食べないんだよね」
と。

あぁ、それは…。

もじもじしてた子たちはみんなあなたを意識してたからでしょうね。
私はまったく意識してないので、良いお友達だと思ってるのでガツガツ食べれるのです。

と、心の中で答えてた。

でもそんな友達関係も段々と怪しくなっていった。

段々と食後にバーに連れて行かれたり、夜景の見える公園に連れて行かれたりして私はその人とご飯に行くのをやめた。

そういうのは求めてなかった。
ご飯は求めてたけど。

ご飯だけなら行きますと最初に言っておいたのに、あの方は約束を破ったのだ。

そんな私が旦那と知り合って、旦那も私を美味しいお店へ沢山連れてってくれた。
恥ずかしい話だけどファミレスばっかりで居酒屋に行ったことがなかったので、居酒屋での楽しみ方を教えてくれたのは旦那だ。ありがとう!

ある時、自分で串揚げを作れるお店へ旦那と行った。
自分で揚げて食べるのだ。
これは楽しい、そして揚げたてを食べれる!

私と旦那で選んだ具のナンバーワンはずばりエビ
すっごい美味しかった!!!

もうね、尻尾までカリカリになるんだよ!
尻尾まで食べれる!
これがまた香ばしくて海老の身の部分よりも尻尾のほうが海老の味がしたような気がw
これはハマった!お酒にも合う!

お酒も飲んでいい気分で帰宅。

美味しいものを食べたあとってとても幸せな気持ちになるよね。
そういう体験をさせてくれた人に対してすごく愛情が上がるのが自分でもわかる。

食い意地がはってる。
やっぱり餌付けされやすいタイプだ。

で、私は背を向けてPCに向かってる旦那の背中にこう書いた。

(す き ❤)

旦那は無視するかなぁと思ったら振り返った。
私はちょっと照れくさくて「うひひ」とか笑っていたら旦那はこう答えた。

「ん?……『 エ ビ 』?」

ちがあああああああああああああああう!!
なんでエビーーーーーーーーー!?

「いやほら、エビ美味しかったって何度も言うからw」
「なんで背中にわざわざ『エ ビ ❤』って書かなきゃいけないんだwww」
「エビ美味しかったからでしょ?」

う、うん。いや違う。
エビは確かに美味しかったけど、違うそうじゃない。

だけど私は背中に書いた文字を心の中にしまって先に寝たのであった。

-完-

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