怖い人の懐に潜り込む嫁


日常

クラスにも、職場にも、大体いるよね。
怖い人。

怖い人と言っても色んなタイプがあるとは思うけども、ここで言う怖い人とは人に攻撃的な話し方をする人ってことで。

普通に言えばいいことをなぜか威圧的に言うとか。
まぁそんな感じ。

そういう人が大体どの団体にも1人くらいは存在することが多くて、私はそういう人がとても苦手だった。
まぁ得意な人はいないかもだけど。

昔、信用金庫に勤めていた時、まだ新人だった私は覚えることが多くてヒィヒィ言ってた。
そしていたのだ。
怖い女性の上司が。

上司といってもチーフ的な感じだったと思う。
正式な役職名は忘れた。

いつも眉間にシワを寄せて周りを見ていて怖かった…。
普通に教えてくれたらいいのに、いきなり叱られるのでビビってしまうのだ。

その上司が苦手で怖くてどうしようかと色々と思案した。
絶妙な距離をとってるから怖いのかも?

むしろ、めっちゃ近づいてみたらいいかも。
そんな風に思って私はその怖い上司になるべく近寄る作戦をとった。

わからないことは敢えてその怖い上司に聞く。
めっちゃ教えてもらう。

怒られても「すみません」「わかりました」だけじゃなくて、お礼を言って「なるほど、そういうことなんですね」とか言いつつ会話を続ける。
なるべく話す。すごく話す。

時間やタイミングを見ては話しかける。

そんなことを続けていたら、会話の中でその怖い上司が笑ったのだ…!!!
おお!
笑った顔始めてみたかも!

良かった、この人は鬼じゃない!ニンゲンだ!

もちろん質問に行くとちゃんと教えてくれる。
最初のうちは顔もこわばったままだったけど、段々と表情を崩してくれるようになった。

そのうち雑談もするようになって、いきなり叱られることもなく普通に注意して教えてくれるようになった。

あれ?普通にいい人?
めっちゃ怖い嫌な人だと最初思ってたけど、全然いい人じゃないの!

それから私は怖い人と接触する機会があると敢えて近づいてみる作戦を実行するようになった。
いや、ほら、ほんとにマジに怖い人には近寄らないよ…?
そのスジとかあのスジの関係は。

それからうん十年たち、今住んでるアパートでのこと。
買い物を終えて自転車をアパート階段の下にしまっていたら、その横に置いてある自転車の持ち主らしい怖そうなおじさんが声かけてきた。

「おう、姉ちゃん、自転車そこに止めるな。邪魔だ」
「え」
「自転車はあっちに止めてくれ、あっちに自転車置き場あるだろが」

実はその頃自転車を手に入れてまもなくて、アパートの自転車置き場の場所を知らなかったのだった…。
階段下に自転車がすでに置いてあったので、ここでいいのかと思ってたら違ったようだ。

おじさんに「あっち」とアパートの奥のほうを指さして言われて、「あ、あっちにあるんですね?わかりました^^」と笑顔で自転車置き場に向かった。

自転車を置きながらちょっと心がざわつく。
怖い人キタ。苦手なタイプだ。

私は自転車を置いたあと、大量の買い物袋を持って階段下まで戻ってきた。
おじさんは階段下の段差に座ってタバコを吸ってる。

私は溢れそうな買い物袋を持ちやすくするために、いつもそこで一旦腰をおろして荷物をまとめるのだけど、今日はおじさんがいる…。

まぁ、いいや。
怖い人だからあえて近寄る作戦だ!

私はそのおじさんの横に並んで腰をおろした。
おじさんは「!?」とちょっとびっくりしたみたいだったけど、私は構わず買い物袋の整理をはじめた。

そんな私を見ておじさんは再び話しかけてきた。

「姉ちゃん、どっからきたんだ?」
「あ、今スーパーから…」
「いや、ほれ、出身よ」
「あぁ、神奈川県です」
「ほう!俺はあれよ、横浜なんだよ」
「あ、そうなんですね!」

ちょっとだけ話がはずんだ(笑)
荷物をまとめ終わったら「ではー^^」とにこやかに挨拶したら。おじさんも「おう」とか言って軽く微笑んだ。

ほらー!
怖くないよ!
もう大丈夫だ!

しかし、おじさんだけ階段下に自転車とめてずるくない?って思ってたけど、おじさんがアパートの前にタクシー呼んでるのを見かけたときに足を引きずってるのを目撃して納得した。

おじさんとはそれっきり合うことがなく、気づいたら引っ越していなくなってた。
怖い人にはあえて近寄って話してみる作戦はやっぱり有効かもしれない。

おしまい。

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