それは私が嫁になるはるか昔、まだ小学2年生だった頃。
両親と3歳の弟(仮名:タカシ)の市内のお城に散策に来ていた。
その頃、都会から田舎へ引っ越したばかり私達は観光もかねての散策だった。
観光といっても今後は住む場所なのだけども。
季節は真冬。
城のお堀はすっかりガチガチに凍っていた。
それすらも私達家族には珍しいものだった。
水位は自分たちが立ってるお堀の縁からほんの30センチほど下だったので、凍ってるのがよく見えた。
家族で凍ったお堀を見て「すごいねー」なんて言いながら更に歩いたが、ふと父が振り返って言った。
「?…タカシはどこいった?」
父の言葉に母と私が振り返るとそこには誰もいない。
え……消えた!?
そのとき母から鋭く息を吸い込む音が聞こえた。
「ヒッ!」
母の視線のほうを見ると、なんと弟が凍ったお堀の上に立ってこちらを見上げてニコニコしてるじゃないか…!!
父も母も私も一瞬で凍りついた。
小学2年生でもわかる!それはやばい!アブナイ!危険だ!と!!!
直後両親は「動くな!そこを動くな!!」「イヤァァァァ」などど大騒ぎしながらタカシをお堀から引き上げた。
ガチガチに凍ってたからか、弟が軽かったからか、氷は割れずに済んだけど。
マジであのときは血の気が引いた。当時子供の私ですら。
本当に2歳~3歳児は気をつけないといけない。
行動力抜群だから。
小さいから視界から消えやすいし。
その事件はその後、大人になっても家族の間で語り継がれていった。
『タカシ、氷上に立つ』
と。
いやもう、ほんと何もなかったから笑い話になるけど、氷が割れてたらと思うと怖すぎる。
弟はその後もいくつか伝説を作った。
すべり台から落ちたり、部屋の窓へ頭からつっこんで流血したり。
どれも3歳くらいのときのことだ。
小さいお子さんをお持ちのご家族の皆さんは、どうかご注意くださいね。
おしまい
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